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《コラム》最近の税務調査事情
◆税務調査はいつ来るの?
7月1日が国税局の人事異動の日となるのと、12月には一度調査状況を集約しますから、税務調査のメインは8月~11月です。その後1月・2月にも調査はありますが、3月が確定申告の時期になりますので、長引くような調査はありません。確定申告が終わると4月に事業内容の確認程度の調査が行われます。その理由は5月が3月決算の法人の申告月のため、立ち会う税理士の業務が多忙を極め日程調整が難しいからです。そして6月は税務署員が7月1日の人事異動に向けて、残務整理のため調査はありません。
◆最近の傾向
上記のサイクルが従来は一般的でした。しかしここ最近は、税務署も人手不足か、ノルマが厳しくなったのか、このサイクルが若干変わってきております。6月はさすがに調査はありませんが、6月の後半になると調査予約の問い合わせが殺到します。7月の調査依頼です。7月1日に人事異動があるため、本人ではなく後任の調査官が税務調査を行うための先行予約です。「後任の者はまだわかりませんが、決まったら改めて連絡いたします」といった感じで税務調査の日程を予約してきます。従来8月スタートだった調査は7月スタートに変わりつつあります。
◆3月にも税務調査
3月15日は個人の確定申告の申告期限で税理士会からも税務調査は控えるよう税務署に要望を出しているため、3月の税務調査はまずありませんでしたが、ここ数年は3月15日以降ならいかがですか?といった問い合わせが多くなっております。
そのためか4月・5月の税務調査もかなり増えてきております。
◆3月~5月はチャンスです
3月~5月の税務調査は必ず6月には結論を出して7月1日の人事異動までには終わらせなければなりません。そのため立場的には納税者の方が有利です。無理難題は言えませんが、調査担当者は早めの終息を望んでいます。数年に1度は必ず来る税務調査です。3月~5月の調査依頼は断らずに進んで受けましょう。
《コラム》税務調査等に対する再調査・不服審判・訴訟の数
◆調査後の決定等に不服申し立てができる
税務調査等で税務署長が行った更正などの課税処分や、差押えなどの滞納処分に不服があるときは、処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に、税務署長に対して「再調査の請求」を行うことができます。また、再調査の決定から1か月以内であれば、国税不服審判所に対しての審査請求を出すことができます。国税不服審判所は、国税庁の特別な機関であり、法律に基づく処分についての審査請求に対して、公正な第三者的な立場で採決を行うとされています。
また、再調査を請求せずに、国税不服審判所に対して審査請求を行ったり、再調査の結果が3か月経っても出なければ結果を待たずに審査請求をすることもできます。
◆勝ちの目は少ない戦い?
国税庁は過去年度の再調査等の発生状況を公表しています。内容を見てみると、平成30年度の再調査の処理件数は全体で2,150件。その中で、一部容認が237件、全部容認が27件となっています。一部もしくは全部、納税者側の訴えを認めた割合は12.3%となっています。
国税不服審判所へ申し立てた審査請求の処理状況を見てみると、平成30年度の処理件数は2,923件で、一部・全部が容認された合計数は216件です。納税者側の訴えを認めた割合は7.4%となっています。
◆訴訟もできるが勝てるかは別
国税不服審判所の裁決から6か月以内であれば、裁判所に対して訴訟が可能です。こちらの終結状況も公表されていますが、平成30年度に終結した全体数177件に対して納税者側一部・全部勝訴の全体数は6件、割合にして3.4%となっています。
再調査に関して言えば、「処分内容を精査したらこれはミスだった」等の指摘もあるでしょうから、そういった訴えで容認割合が比較的高いことが考えられます。不服審判所や裁判所まで行くケースであると、税法の解釈や過去の判例等、税理士や弁護士があらゆる論拠を持って戦っても、決定について覆されるケースは少ないようです。
ただ、不服申し立てをしたからといって、納税者が決定以上に不利になることはありません。根拠があり「間違っているのでは」と照会するのは悪いことではありませんから、税務署の処分に納得がいかない場合は、専門家に相談の上、まずは再調査の請求を検討してみてはいかがでしょうか。
記事提供者:ゆりかご倶楽部