《コラム》勘定合って銭足らず
◆勘定合って銭足らずとは
会社の事業の儲けは基本的に利益です。しかし利益が出たからといってその分お金が増えているかというと、そうでもない場合があります。というよりもそうでもない場合の方が多いかと思います。
そういった状況が「勘定合って銭足らず」です。原因は多岐にわたりますが、設備投資等大きな投資をしたような場合は、原因がはっきりしているので、多くの場合経営者は自覚的で特に問題にはなりません。原因が分からない場合が問題です。
◆銭足らずの比較的分かりやすい原因
①在庫が異常に増えている場合
②売掛金や受取手形等の売掛債権が異常に増加している場合
③買掛金や支払手形等の買掛債務が異常に減少している場合
このような場合、要は儲かった銭が在庫や債権債務に姿を変えているということです。決算書を注意して見ればある程度分かります。経営者としては、当然の注意義務です。また経験の長い経営者なら「おや?」と気が付くものです。
◆銭足らずの分かりにくい原因
慢性的に銭足らずの場合があります。どういう場合かというと、借金を返済している場合です。設備投資等大型の投資を借入金でまかない、その返済をしているような場合は、往々にして「勘定合って銭足らず」となっている場合があります。
要は借金の返済をするには儲けが少なすぎるという場合です。
◆利益が十分か再確認してみましょう
税引き後利益と減価償却費の合計から年間の返済金額を引いてみてください。また配当などをしている場合は、その分もマイナスしてください。結果がマイナスであればその金額を65%で割り返した金額分利益が不足しています。毎年銭足らずとなります。逆にプラスであればその分資金は増えているはずです。
税引後利益が分からない場合、安全を考えて利益の65%としてみてください。
《コラム》「業務委託」「在籍出向」「副業」の労務管理
◆労働力の活用方法の多様化
新型コロナウィルス感染症の影響もあり人材の動きにも影響が出ています。仕事が減った事業のある一方で人手不足の事業もあり働き方も多様化しています。
雇用以外で仕事を受け負う形態も有り、その違いを知り企業間の労務管理や契約書を交わすことが求められるでしょう。いくつかの契約形態の例で見てみます。
1、業務委託
自社で対応できない業務を外部に委託する契約の総称です。
請負契約や委任契約はこの部類です。
社員を送る側の会社(受託者)は自社の社員に命令して社員を受け入れる側の会社(委託者)から依頼された仕事を請け負います。委託者は受託者に対し、業務委託手数料を支払います。
業務上の指示を出すのは受託者です。委託者が指示を出すといわゆる「偽装請負」とみなされ労働者派遣法の罰則に該当してしまいます。自社が委託者で業務の進め方に注文があれば受託者に話を通す必要があります。賃金、労働時間管理(委託先での労働時間を働いた人が受託先に報告)、社会保険・労働保険の適用は受託者が行います。
2、在籍出向
在責出向は社員を送る側(出向元)との労働契約を維持したまま、受け入れる側(出向先)とも労働契約を締結して働くことです。出向を命じられた社員は出向先の指揮命令を受けて働きます。出向先が出向契約にない業務を命じる場合は都度出向元と相談が必要でしょう。
賃金、労働時間、社会保険・労働保険の取り扱いは出向契約で決めますが、賃金は通常出向元が負担、その場合、社会保険や雇用保険は出向元で加入します。労災保険は出向先の保険を適用することが一般的です。労働時間は通常出向先で管理します。
3、副 業
副業とは本業と掛け持ちで他の仕事をすることで本業先が自社の社員を副業先に紹介した場合は、副業先も労働契約を結びます。業務中の指示も副業先が出します。労働時間は副業先では副業先が管理します。
時間外労働は本業と副業先と両方で働く場合、両方の労働時間を通算し法定労働時間を超えた時間が副業先(原則労働契約時期が遅い方)での支払いになります。社保加入は条件を満たせば2社の適用になり、雇用保険は賃金の多い方で加入します。