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《コラム》同一労働同一賃金の動向
◆雇用対策法から労働施策総合推進法へ変更
4月から働き方改革法が実施され、年次有給休暇や時間外労働時間の上限規制の問題の次にやってくるのが同一労働同一賃金です。正規か非正規かという雇用形態に関わらない均等・均衡待遇を確保し不合理な待遇差の解消を目指そうとするものです。昨年6月、最高裁で同一労働同一賃金を争点とした2つの重要裁判の判決がありました。
1.ハマキョウレックス事件
・正規社員と非正規社員の間の手当の不支給等の差別訴訟
・手当や賞与等それぞれの趣旨目的に基づく不合理性の検証が求められた
2.長澤運輸事件
・定年再雇用者の賃金減額の差別訴訟
・定年後の雇用に一定の年収減は容認。ただし自由に年収を下げられる訳ではない
◆時流は差異縮小の方向へ
今年になってからも重要な判決が次々と高裁で出され、5年超の勤続者に対する差異が問題とされるケースが目立っています。
一方「パート・有期法」においても短時間労働者や、有期雇用者から待遇差に対する説明を求められた時には事業主は説明をしなくてはなりません。その待遇の性質・目的を分析し、待遇相違の説明が出来ること、つまり同一労働同一賃金の本命は人事制度整備の必要性であることが示されたと言えるでしょう。
◆これから企業としての対策は
では対応はどのように進めるのがよいでしょうか?
・現状で不合理性があるか否かの判断
①業務内容、責任の度合い、人事評価制度、職責上の責任
②人材活用の仕組みの違い、配置転換など
③労組、従業員との交渉
・福利厚生や諸手当等不合理か差異の検証
・基本給、賞与、退職金、扶養手当は最高裁の判断待ち
・賞与については正規に出しているならゼロは認められない可能性あり
・賞与、退職金共に業績連動、評価反映、ポイント制等一律でない支給方法の検討
・5年を超える長期勤続の非正規従業員についての待遇差は要注意
このようなことを考慮しておけば不合理とはされにくいでしょう。今から準備しておきましょう。
《コラム》同一労働同一賃金に向けた賃金制度
◆賃金制度や評価基準が必要な時代になる
2020年から大企業、2021年からは中小企業に、働き方改革の一つ、同一労働同一賃金制度が適用予定です。同一労働同一賃金を行うには賃金制度と社員の賃金額を決定するための評価基準を定めなければならないでしょう。
◆どのような賃金制度があるか
賃金制度は様々ありますが主なものを見ていきましょう。
・年功給:年齢に従って賃金を決めます。社員との信頼関係を強くでき長期人材育成に向きます。しかし、高齢化による人件費増加や貢献度では上昇が変わらずぬるま湯体質になりがちです。
・職能給:社員の能力に従って賃金を決めます。柔軟な人事、人材活用、能力開発に向いています。ただし年功的運用になりやすく、不適切な評価をすると社員の不信感につながります。
・職務給:仕事に対して賃金が決まります。仕事と給与の関係が明確です。不要な業務の削減や職務意識の強い専門家育成に効果的です。一方で仕事に人を配置するため異動が難しく人事は硬直化します。企業への帰属意識も高くなりにくく、担当の仕事以外の設備導入や業務効率化などには非協力的になる傾向です。
・役割給:業績、役割、貢献度に応じた賃金にしやすく、年収感覚もマッチしやすいためチャレンジ意欲の高揚につながります。他方で基準作成の難しさや目標の抑制傾向が見られます。
・歩合給:売上等の成果に応じて賃金が変動します。賃金の算定基準が明確でわかりやすく、成果に応じた賃金のためやる気につながります。しかし売ればいいとお客様軽視になりがちで、不安定な賃金は販売が伸びないと意欲低下を招きます。
・行動給:行動や姿勢によって賃金が変動します。経営理念や方針、戦略と連動させやすく望ましい組織風土を醸成させます。社員の行動の質も高めやすいのですが行動基準の更新をしていく必要や重要な行動の抽出、言語化は難しい傾向です。また行動の基準が決まるため基準に合わせた行動しかしなくなる行動の標準化問題があります。
◆組み合わせて使いましょう
それぞれの賃金制度には長所短所があります。一つの制度ではカバーできないので数種類を組み合わせるとよいでしょう。
記事提供者:ゆりかご倶楽部