新型コロナウイルスによる感染拡大防止のために、自宅で過ごす時間が増えました。みなさんもご自宅で思い思いの時間を過ごされていることと思います。自宅で過ごす時間が長かったことで、家の中をきれいにしようといわゆる「断捨離」をする方も多かったようで、その捨てられたごみの量などはニュースにも取り上げられました。
さて、片付けや断捨離の本は多数出版されていますが、皆さんの印象に残っているものはありますか?私は最近、「28文字の片づけ」という本が印象に残りました。重版されているようですので、書店で目にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。タイトル通り、片づけに関するトピックスが短い言葉で伝えられており、その内容も簡潔で、納得させられるものばかりです。
例えば、『捨てるか迷ったら、捨てるか使う』という言葉は、断捨離でよくある「今使ってないけどそのうち使うから…」と捨てずにとっておいたものにフォーカスをあてています。もったいないと思って使わずにとっておいたものは、本当にとっておくほどのものだったのか確認することを促している言葉ですが、私も実際に使ってみると今の自分にはしっくりこなくて、結局捨ててしまったという経験があります。
ここで、断捨離に必要な2つの要素として、「今」と「自分」があることがわかります。「人生がときめく片づけの魔法」でも有名な近藤麻理恵さんも、「今」の「自分」がときめくかどうかを基準に捨てるものと捨てないものを区別していましたので、断捨離における基本の軸とも言えるのでしょう。
よく、「少しやせたら着たい」とか、「また流行するだろう」と思って洋服を取っておいてしまいますが、残念ながらその洋服を着る機会はほとんどやって来ません。仮にその洋服が着られるタイミングが来たように見えても、若い頃に来ていた洋服を年齢を重ねた「今」の自分が着ても年相応の格好とはなりにくく、満足を得られないからです。そして、1年間手に取らなかったものは、9割方その後使われることはありません。
思い出の物は別でとっておくとしても、こうして「今」の「自分」に必要なものという基準で判断すると、断捨離もはかどるのだと思います。
そして、この断捨離の考え方は仕事や時間管理にも使えます。新型コロナウイルスの影響で外出自粛・在宅勤務となったためにこれまでのやり方から変更せざるを得なかったこともあったと思いますが、それこそが断捨離のチャンスです。仕事の断捨離はいわゆる物を捨てるだけではなく、これまでやってきたことや仕組みそのものを見直すことも含みます。在宅勤務を始めてみたら、実際には一つの場所に集まる必要がないことが分かったので事務所の賃貸契約を解約した、というのがわかりやすい例ですが、「今」の「自分の会社」を軸に、優先順位をつけながら取捨選択していくことで、本来やりたいことや進むべき方向などもよりはっきり明確になっていくのです。
一方、時間管理における断捨離は、いわゆる無駄な時間を言います。何をしているかわからない時間や、ダラダラした時間、理由もなく携帯電話を触っている時間などは無駄な時間と言えそうです。在宅勤務を含めて自宅で過ごす時間が長くなった分、時間管理は自分できっちりする必要があります。もちろん、たまにはゆっくりする時間も大切ですが、日々を過ごすうえでも「今」の「自分」を大切にできるといいと思います。
冒頭にご紹介した「28文字の片づけ」の著者であるyur.3(ゆりさん)は、「断捨離は目的ではなく自分を変えるための手段」とも書いています。私はこの言葉を、部屋をきれいにするのが目的ではなく、きれいにするまでのプロセスが自分の行動や生活スタイルを変えるための手段だ、と解釈しています。断捨離は「今」の「自分」の軸となる部分を棚卸することであり、いらないものを処分することは自分をリセットするのと同じことだと感じました。
断捨離をした後、どのように変わっていくかは自分次第ですが、気持ちも新たに、「今の自分に何が必要で、何が大切か」ということを問いかけながら生活していきましょう。