「天災は忘れた頃にやってくる。」
この度の新型コロナウイルス感染症の罹患や新型コロナによる経済的な被害は、私の脳裏にこの言葉を思い浮かべさせてくれました。
「天災」とは、地震、台風、大雨、火山噴火などの被害を引き起こす自然現象のことです。これと似たような言葉に「災害」があります。「災害」とは、「天災」を含んだうえで、さらに「人為的に起こされたもの」いわゆる「人災」も含む広範囲なものと、自然災害対策ネットにはこのように記載されています。
新型コロナウイルスによる被害は、自然のウイルスが発生源だとすると「天災」なのかと思うのですが、人間の行動が新型コロナウイルス感染症の拡大に大きく関係しているとなると「人災」と言えなくもなく、私には「天災」なのか「災害」なのか区別がつきませんし、「天災」でも「災害」でも大きな被害になってしまっている現状を鑑みると、どちらでもいいように思います。
冒頭に記載した言葉は、一般的に戦前の物理学者、随筆家、俳人であり複数の筆名を持つ寺田寅彦氏の言葉と言われているようですが、実際は寺田氏の作品中にこの言葉の記載はないようです。寺田氏の弟子の中谷宇吉郎氏が「天災は忘れた頃来る」(昭和30年8月)という題の随筆を書いていて、『中谷宇吉郎随筆集』(岩波文庫)に記述が見られるとレファレンス協同データベースに載っていました。
寺田氏は、「天災と国防」1934年(昭和9年)という随筆を記しております。その中に下記の3つの文章があります。ご紹介いたしましょう。
「気象学的地球物理学的にもまたきわめて特殊な環境の支配を受けているために、その結果として特殊な天変地異に絶えず脅かされなければならない運命のもとに置かれていることを一日も忘れてはならない」 (日本のことを言っています。)
「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実」
「いやが上にも災害を大きくするように努力しているものはたれあろう文明人そのもの」
私は、冒頭の言葉の意味を調べるまでは寺田寅彦氏の名前は聞いたことがあるくらいで、どのような人物かは全く知りませんでした。また、上記の文章を読んだ時に、現在の日本や世界の状況を言い得て妙だと感じ、寺田氏の先見の明とその卓越した慧眼に驚かされました。
新型コロナウイルス感染症による皆様方の生活への影響はいかがでしょうか。私は、その影響は非常に大きいものがあったと思いますし、今後もこの状況が続くものと思っています。また、この紙面を借りまして皆様方にお見舞いを申し上げます。
新型コロナウイルス感染症が世界中に拡大した前と後では、世の中の状況や物事に対する考え方が変わると世の中では言われているようですが、具体的にどのように変わっていくのかは、私には想像しかねます。しかし、私が一つだけ言えることは、考え方等を変えていく必要があるということです。変えていく必要がある事が、生活様式なのか他の事なのかは人それぞれだと思いますし、また企業活動も変える必要があることの一つだと思います。
現時点(この記事を書いているのは、2020年6月中旬です。)において、前年対比で利益が出ている企業は実際どれくらいの割合であるのでしょうか。私の担当先だけでいうと1割に遠く届きません。ほとんどの企業が赤字で苦しんでいますし、この数値や周囲の状況を見て感じることは、新型コロナが経済等に与える影響がいかに大きいものであるかがわかります。
このような不測の事態に直面すると、先にご紹介した寺田氏の3つの文章が我々に伝えようとしていることが非常に大事に思えてくるのは私だけなのでしょうか。
目に見えない、現状ではワクチンもない、対応に苦慮する新型コロナ。この影響で業績は下がったものの自社の弱点や取り組むべき課題が目に見えてきた経営者の方も多かったのではないでしょうか。今までは、主力商品、主力取引先などで十分に商売になっていたものが、これまでは想像すらしていなかった新型コロナによってもたらされた自粛生活の影響で、商売にならなかった企業様が数多くありました。非常に大変な事態になっています。
今後もこのようなことが起こることは想像できます。ならば、その未知なる脅威に対応していけるだけの力を持つ必要があると思います。その力をつけるために、今回の事を教訓にして企業を変えていく必要があると思います。「ピンチはチャンス」という言葉もあります。
この機をチャンスと前向きにとらえ、事業をブラッシュアップしていただきたいと思います。